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まもなく改訂版が発行!ISO14001:2026に備えよう。 何が変わる? 企業・組織の取るべき対応とは?

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この記事でわかること

  • 改訂版の発行スケジュールは?(2026年4月予定)
  • 2026年3月時点で明らかになっている、現行の規格との変更点
  • ISO14001を取得している組織がこれから準備すべきこと
  • 移行の流れ(移行審査まで)と注意するポイント

本記事では、「いよいよ今月に迫っているISO14001の改訂動向が気になる」「自分たちが何を想定し、どう動けば良いのか知りたい!」というISOのご担当者様向けに、今後のスケジュール、変更内容、そして必要な準備について説明します。

また、最後のよくある質問では、規格の移行にあたって企業・組織様からよくいただくお問い合わせ事項を、随時追加していく予定です!

(※)本記事は、2026年3月時点の情報に基づいています。ISO14001:2026は、現在出版準備中の段階であり、正式な国際規格の発行までに日程などが変更される可能性があります。情報は随時更新してまいりますので、定期的にご確認ください。

目次[非表示]

  1. 1.規格改訂スケジュールと現在の進捗状況は?
    1. 1.1.規格の発行形式の変遷
    2. 1.2.規格改訂の動向について、公式情報を確認しよう!
  2. 2.今回の改訂の基本方針
    1. 2.1.改訂のテーマについて、公式情報を確認しよう!
      1. 2.1.1.検討するべきテーマ
      2. 2.1.2.ISO 14001:2026の紹介
  3. 3.ISO/FDIS14001 主な変更点
    1. 3.1.ISO 14001改訂の主なポイント
    2. 3.2.【箇条4】組織の状況 4.1:組織及びその状況の理解
    3. 3.3.【箇条4】組織の状況 4.2:利害関係者のニーズ及び期待の理解
    4. 3.4.【箇条4】組織の状況 4.3:環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
    5. 3.5.【箇条5】リーダーシップ 5.1:リーダーシップ及びコミットメント
    6. 3.6.【箇条5】リーダーシップ 5.2:環境方針
    7. 3.7.【箇条6】計画策定 6.1.2:環境側面
    8. 3.8.【箇条6】計画策定 6.1.4:リスク及び機会
    9. 3.9.【箇条6】計画策定 6.3:変更の計画策定
    10. 3.10.【箇条8】運用 8.1:運用の計画策定及び管理
    11. 3.11.【箇条9】パフォーマンス評価 9.1.1:一般
    12. 3.12.【箇条9】パフォーマンス評価 9.2.2:内部監査プログラム
    13. 3.13.【箇条9】パフォーマンス評価 9.3.2:マネジメントレビューへのインプット
    14. 3.14.【箇条10】改善 10.1:継続的改善
    15. 3.15.附属書Aの拡張
    16. 3.16.附属書SL/HSに合わせ、文書化要求の表現をわかりやすく変更
  4. 4.移行のために必要な準備
    1. 4.1.移行審査までの流れ
      1. 4.1.1.Point❶
      2. 4.1.2.Point❷
    2. 4.2.ISO14001:2026の移行期間は?
    3. 4.3.規格改訂モデルスケジュール
      1. 4.3.1.Point❶
      2. 4.3.2.Point❷
  5. 5.よくある質問

規格改訂スケジュールと現在の進捗状況は?

2026年3月現在、改訂版の規格は、2026年4月頃に発行される予定です。

2023年7月頃から改訂作業が開始している新しい規格は、2025年11月12日に「最終国際規格案(FDIS:Final Draft International Standard)」として登録されました。
2026年1月5日には、登録された英文FDISが、すべてのISO加盟国へ回付され、8週間ほどの投票期間でその内容について賛否が問われました。
そして2026年3月3日、差し戻しなど特別なトラブルなく、投票は終了しました。

こうしてFDISは「国際規格(IS:International Standard)」発行用として承認され、現在は正式な規格書としての出版準備されています。
企業にとっては、実務準備の開始を意識する段階に入ったと言えるでしょう。

ISO14001:2026 今後の流れ

  1.  原案作成:WD(作成原案)                 2023年9月
  2.  原案作成:CD(委員会原案)               ← 2024年2月
  3.  原案作成:DIS/DAM(国際規格原案/追補原案)   ← 2025年2月
     原案作成:DIS(国際規格原案)             ← 2025年6月※1
  4.  最終確認:FDIS(最終国際規格案)            ← 2025年1月
  5.  正式発行:IS(国際規格)               ← 2026年4月 発行予定
  6.  日本語訳版:JIS(日本産業規格)                 ← 2026年7月~ 約1年後 発行予定※2

※1 統合追補から規格改訂へ発行形式が変更(プロジェクトが変更)
※2 発行の母体が異なるため、JISの発行にはタイムラグがあります

なお、発行されたFDISの邦訳書(※JIS規格ではない)は日本規格協会グループなどで購入できます。

また、JIS規格案(ドラフト版)は現在、5月14日まで意見受付公告中です。

規格の発行形式の変遷

「2024年に気候変動に関する追補が発行された後、また新しい追補版が出ると聞いていたけれどどうなったの?」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

「追補(Amendment)」と「規格改訂(Revise)」の違いについては、以下の記事をご確認ください。

2024年2月に発行された追補版1(ISO 14001:2015/AMD 1:2024)では、箇条4.1と箇条4.2にのみ、気候変動に対する組織的な配慮事項を考慮するよう求める軽微な補足がされました。

その後、2025年7月までは追補版2(ISO 14001:2015/AMD 2:2026)を「統合追補」としてリリースするつもりで、新しい規格の開発プロジェクトが進められていました。

しかし、予想以上に修正箇所が多かったことから、正式に「規格改訂」第4版として発行するようにプロジェクトの変更が決まり、同時に組織は移行審査への対応も必要になったのです。

【 ISO豆知識 発行形式の種類 】


  • 規格改訂(Revise)

―既存の規格の内容から大きく変更するため、既存の規格を廃止して新しい版へと移行する
 例 『ISO14001:2015』を廃止し、『ISO14001:2026』を新たな基準として移行する必要がある

  • 追補(Amendment)

―既存の規格はそのままで、補足や修正など小規模な文の変更を加えた部分的で独立した規格書として発行する
 例 『ISO14001:2015』と『ISO14001:2015/AMD 1:2024』どちらも基準として参照しなければならない

  • 統合追補(Consolidated Amendment)

―既存の規格の内容と追補の内容、2つを合わせて1冊の中にまとめる
 例 『ISO14001:2015』は廃止されていないが、『ISO14001:2015/AMD 2:2026』のみ基準として参照すればよい

規格改訂の動向について、公式情報を確認しよう!

ISOの公式ページでは、以下のように最新の進捗が確認できます。
定期的に、現在どの段階なのかを確認しましょう。

この2つの図の見方を解説します。
2026年3月3日、発行段階(60/Publication)において、「国際規格(IS:International Standard)」は軽微な修正や編集のうえ、出版準備(60.00/International Standard under publication)が開始したところです。そして最後に、国際規格が発行(60.60/International Standard published)となります。

この公式情報を日本語に訳し、提案段階(10/Proposal)から発行段階(60/Publication)までの必要最低限の情報に修正したものが以下の通りです。
現在は【6-1】出版準備中であり、【6-2】IS発行は2026年4月に予定されています。

今回の改訂の基本方針

2026年の改訂は、前回2015年の改訂のような大きな改訂ではありません。

附属書SL(Annex SL)の改訂に合わせることが今回の主な改訂内容となり、規格の目的や基本構成など、規格の根幹となるところについては変更はありません。
規格を附属書SLの共通テキストに合わせることによって、複数のマネジメントシステムが統合され運用しやすくなります
また、附属書A(Annex A)が拡張されて詳細なガイドが追加されるほか、注記や表現をわかりやすく変更することにより、解釈の明確さや現場での適用のしやすさが考慮されています

改訂の目的

 01

 他のマネジメントシステム規格との整合性を高めるため(附属書SL改訂に伴う変更)

 02

 ガイダンスを強化し、実践的な指針を提供するため(附属書Aの充実)

 03

 既存の要求事項の意図を明確化し、より理解しやすくするため(注記や注釈、表現変更などで対応)

 04

 近年重要性を増している環境課題に対応するため(そのほか、技術革新や国際情勢などへの対応含む)

今回の変更箇所はあくまで既存の要求事項をより明確にすることを目的としたマイナーチェンジであり、新たな要求事項の導入は最小限に抑えていく方針です
よって、現在ISO14001:2015を運用されている企業・組織様は、根本から仕組みを作り直す必要はありません。

改訂のテーマについて、公式情報を確認しよう!

ISO/TC207/SC1は、国際標準化機構(ISO)の環境マネジメントに関する技術委員会であり、環境マネジメントシステムや関連する国際規格の策定を担当している組織です。
この組織の公式ページでは、原案の作成が始まった当初に焦点が当てられていた、以下7点の「検討するべきテーマ」が公表されています。

検討するべきテーマ

  1.  戦略、事業プロセス、及び統合マネジメントシステムアプローチの整合
     (Alignment of strategy, business processes and an integrated management system approach)
  2.  状況の理解及びリスクと機会
     (Understanding context and Risks & Opportunities)
  3.  ライフサイクルの視点
     (Life Cycle Perspective)
  4.  ISO14002シリーズのガイダンス開発に伴う技術的なトピックの強調(気候・廃棄物・水など)
     (Highlighting technical topics as the ISO 14002 series develops guidance in aspects such as climate, waste, water etc)
  5.  外部レポーティング
     (External reporting)
  6.  エンゲージメントと環境への責任を重んじる組織文化
     (Engagement and the culture of environmental responsibility)
  7.  外部委託したプロセスとサプライチェーン
     (Outsourced processes and Supply Chain)

出典/引用:『ISO 14001: 2015 amendment - Why is it being developed?』|Google翻訳|ISO/TC 207/SC 1公式サイト

さらに、2025年に出版された以下の資料によると、今回の規格改訂では以下が意識されています。

ISO 14001:2026の紹介

ISO14001:2026では、

  • 標準をより理解しやすくする(make the standard easier to understand)
  • 実施しやすくする(implement)
  • 他のマネジメントシステム規格との統合を容易にする(integrate with other management systems)

ための、編集上の改善点が導入されています。

また、より広範な持続可能性目標との連携を強化し、環境条件が組織にどのように影響を与え、また影響を受けるかを明確にします。

『環境持続可能性へのより鋭い焦点(Sharper focus on environmental sustainability)』

更新された導入部とガイダンスは、気候変動への対応、生物多様性、資源効率など、今日の環境優先事項とのより強い整合性を提供します。新しいガイダンスは、組織が自分たちの地域の環境条件(例:気候変動の影響、生物多様性の損失、水の利用可能性)が自社の運営にどのように影響するか、そしてその逆も考慮するのを支援します。

『ビジネスの意思決定を考慮する(Taking business decisions into account)』

ISO 14001:2026が最も重要であること、すなわち環境保護とビジネス成果を強調します。この更新された標準は、あらゆる組織がパフォーマンスを向上させ、コスト削減し、コンプライアンスを維持するとともに、信頼性を高め、地球に具体的な貢献をもたらすことを可能にします。この基準は、環境管理が組織の目的、戦略的方向性、リスクベースの思考にどのように整合すべきかを明確にしています。

『用語と使いやすさの向上(Improved terminology and usability)』

2026年版は、より明確かつ読みやすさが向上し、あらゆる規模や業界の組織が要件を解釈し、標準を効果的に実装しやすくなっています。「コンプライアンス義務を満たす」などの用語が、ISO標準間の一貫性を確保するために以前の表現に代わっています。調和された構造により、他の管理システムとの統合がさらに円滑に進みます。

出典/引用:『ISO 14001:2026 – Your trusted standard, clearer than ever』|Google翻訳|ISO/TC 207/SC 1公式サイト

これらの前提情報を念頭に、規格のどこに変更が加えられているのかを見ていきましょう。

ISO/FDIS14001 主な変更点

日本規格協会グループの公式ページでは、規格改訂の主なポイントについて次のように述べられています。

ISO 14001改訂の主なポイント

※FDIS(国際規格案)時点の内容となります。今後の改訂作業によって変更される可能性があります。

  • 環境保護の範囲が拡大され、気候変動の緩和・適応、生物多様性の保護などが明示的に含まれます 。
  • ライフサイクル思考がより明確に要求され、外部から提供されるプロセスやサービスを含むサプライチェーン全体への管理が強化されます 。
  • 近年の事業環境の変化に対応するため、リーダーシップ及びコミットメントにおいて、環境への責任を重じる組織文化醸成等について追加します。
  • マネジメントシステムに関連する変更を計画・管理するための新しい箇条が追加されます。
  • リスク及び機会に関して新たに箇条を設け、関連する要求事項(環境側面、順守義務等)との関係を明確化します。

出典/引用:『注目のISOマネジメントシステム特設ページ』|日本規格協会 JSA Group Webdesk

これらは、透明性のあるサステナビリティ経営、サプライチェーンにおけるリスク管理、ステークホルダーからのGHGプロトコルを基にしたscoop情報開示要求など、昨今のトレンドとも密接に関わってきます。

以上を踏まえて、次の規格要求事項の新旧比較表をご覧ください。
構成には、ほとんど変化がありませんが、表現の変更など、全般にわたって細かい微修正がかけられています。

改訂版

ISO14001:2026の構成

太字アンダーライン=構成の変更 ※緑字=EMS特有

新規
追加

修正や削除
注記や補足

4.組織の状況

4.1 組織及びその状況の理解

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

4.3 環境セキュリティマネジメントシステムの適用範囲の決定

4.4 環境セキュリティマネジメントシステム

5.リーダーシップ

5.1 リーダーシップ及びコミットメント

5.2 環境方針

5.3 役割、責任及び権限

6.計画

6.1 リスク及び機会への取組み

6.1.1 一般

6.1.2 環境側面

6.1.3 順守義務

6.1.4 リスク及び機会

6.1.5 取組の計画策定

6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定

6.2.1 環境目標

6.2.2 環境目標を達成するための取組の計画策定

6.3 変更の計画策定

7.支援

7.1 資源

7.2 力量

7.3 認識

7.4 コミュニケーション

7.4.1 一般

7.4.2 内部コミュニケーション

7.4.3 外部コミュニケーション

7.5 文書化した情報

7.5.1 一般

7.5.2 作成及び更新

7.5.3 文書化した情報の管理

8.運用

8.1 運用の計画及び管理

8.2 緊急事態への準備及び対応

9.パフォーマンス評価

9.1 監視、測定、分析及び評価

9.1.1 一般

9.1.2 順守評価

9.2 内部監査

9.2.1 一般

9.2.2 内部監査プログラム

9.3 マネジメントレビュー

9.3.1 一般

9.3.2 マネジメントレビューへのインプット

9.3.3 マネジメントレビューの結果

10.改善

10.1 継続的改善

10.2 不適合および是正処置

△ ・・・項目(条項)としては新しく追加されたが、要求事項は2015年版の時から存在したもの

次に、要求事項本文(箇条4~箇条10)で特に重要な部分をピックアップして解説します。

【箇条4】組織の状況 4.1:組織及びその状況の理解

  • 状況の理解及びリスクと機会
  • サステナビリティ
  • 環境保護の範囲の拡大

箇条4.1は、組織の「外部及び内部の課題を決定すること」を要求しています。

今回の改訂では、これらの課題を決定する際は、以下の4つの環境状態が自社に関連するかも含めて検討するように、具体的な例示が追加されました。

  • 汚染レベル
  • 天然資源の利用可能性
  • 気候変動
  • 生物多様性又は生態系の健全性

こういった自社を取り巻く状況を、経営戦略や事業プロセスと結び付けて理解する必要があります。

これらの課題には,汚染レベル,天然資源の利用可能性,気候変動,生物多様性又は生態系の健全性など,組織から影響を受ける又は組織に影響を与える環境状態を含めなければならない(A.4.1参照)。

・自社の事業活動や製品サービスが悪影響を及ぼす環境状態はあるか?
・逆に、自社の事業活動や製品サービスの妨げになる環境状態はあるか?
このような視点を用いつつ、SWOT分析やPEST分析などで懸念事項をまとめていきましょう。

内外の課題 事例

  1. 内部の課題
    ベテラン依存(属人化)、少子高齢化や人手不足、教育訓練が体系化されていない、離職率の高さ、短期コスト優先による長期的環境投資の放置、老朽設備によるエネルギー効率の悪さ、変動する生産計画による環境負荷の不安定化、外注・委託先の環境管理の不足、法規制の担当者がいないことによる法令順守リスク、監視・測定におけるデジタル活用不足
  2. 外部の課題
    環境関連法規の強化・高度化、温室効果ガス・化学物質・生物多様性など新領域の拡大、取引先からの情報開示の要求、国際規制による海外拠点への影響、地域社会からの評価、環境配慮の製品サービスへの要求増加、ESG・サステナビリティへの関心の高まり、災害発生時の事業継続計画、異常気象による操業リスク、戦争や地政学リスクによる資源調達リスク、省エネ・再エネ技術の進展

環境課題と対応策 事例

  1. 汚染レベル
    工場排水の自主基準値の強化、土壌汚染のリスク管理、廃棄物置き場の区画管理、大気汚染物質の排出削減、防振ゴムや防振架台の設置や時間帯制限 等
  2. 天然資源の利用可能性
    製造工程での水の使用量削減、リサイクル材への切り替え、エネルギー原材料の調達先分散、レアメタルやレアアースの代替品検討 等
  3. 気候変動
    洪水に備えた設備の高台移転、BCPへの災害対応の組み込み、製品の低炭素技術への入れ替え、最エネ導入や燃料の転換によるCOs排出量削減 等
  4. 生物多様性または生態系の健全性
    工場敷地内の緑化、地域在来種の保護、生物資源の廃棄物ロス削減、森林保護に繋がる認証紙の使用、排水による生態系への影響調査 等

【箇条4】組織の状況 4.2:利害関係者のニーズ及び期待の理解

  • サステナビリティ
  • 環境保護の範囲の拡大

箇条4.2は、組織の「利害関係者と、彼らのニーズや寄せられる期待を決定すること」を要求しています。
ISO14001の場合、「順守義務事項を特定すること」も要求されています。

今回の改訂では、箇条4.1と同様に、4つの環境状態の例示から想起できる「利害関係者のニーズや期待」の存在についても考えておくように注記が追加されました。

  • 汚染レベル
  • 天然資源の利用可能性
  • 気候変動
  • 生物多様性又は生態系の健全性

また、順守義務に関しても参照項番の追加や注記にて定義が記載されたため、以前よりも理解しやすくなっています。

C) それらのニーズ及び期待のうち,組織の順守義務となり(6.1.3参照),環境マネジメントシステムを通して取り組むもの

注記1 関連する利害関係者は,汚染レベル,天然資源の利用可能性,気候変動,生物多様性または生態系の健全性などの環境状態に関連するニーズ及び期待をもつ可能性がある。

注記2 法的要求事項以外の,利害関係者の関連するニーズ及び期待は,組織がそれらを順守することを決定したときに順守義務となる。

順守義務には、3つの種類があります。

  1. 法的要求事項(法令、規制、条例)のような順守が強制的なもの
  2. 自主的に順守することを決めたもの
  3. 協定や契約で合意し盛り込んだもの

環境マネジメントシステムの範囲内でどのようなものがあるか、再度洗い出しましょう。

利害関係者と外部からの要求事項 事例

  1.  取引先 「温室効果ガス排出量を公開してほしい」「再エネ設備を導入してほしい」
  2.  行政、自治体 「脱炭素に関する新しい法律や条例を守ってほしい」
  3.  銀行、金融機関、投資家 「気候変動対策への取り組みを、融資の判断材料にしたい」
  4.  従業員、求職者 「環境問題やサプライチェーンのリスクヘッジが十分な会社で働きたい」
  5.  地域社会 「自分たちの暮らし(騒音や悪臭、地盤や水質)に影響がないか説明してほしい」

【箇条4】組織の状況 4.3:環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

  • ライフサイクルの視点
  • サプライチェーン全体の管理

箇条4.3は、組織がどの事業活動、どの製品サービス、どの境界(組織や所在地の単位)で環境マネジメントシステムを運用し、規格要求事項を適用するのかを決定するよう要求しています。

今回の改訂では、適用範囲の決定の際に以下を考慮するよう修正されました。

あなたの組織の持つ権限や能力

  • 組織の活動、製品サービスのライフサイクルどこまで管理できるのか
  • 組織の活動、製品サービスのライフサイクルどこまで影響を及ぼすことができるのか

この適用範囲を決定するとき,組織は,次の事項を考慮しなければならない。

e) 組織の活動,製品及びサービスのライフサイクルを管理し影響を及ぼす組織の権限及び能力

連結会社(子会社、関連会社)やサプライヤー、ベンダーなど、自分の会社が直接関与しない場所での環境負荷を減らすことも重要です。

ライフサイクルの各段階(一連の流れ) 事例

  1.  原材料の調達(購買)
  2.  設計開発
  3.  生産、製造
  4.  輸送(配送)
  5.  営業、販売
  6.  使用、使用後の処理
  7.  廃棄(最終処分)

【箇条5】リーダーシップ 5.1:リーダーシップ及びコミットメント

  • 環境への責任を重んじる組織文化の醸成
  • 積極的参加(従業員エンゲージメント)

箇条5.1は、トップマネジメントが果たすべき役割や責任を定めている要求事項です。

改訂前はトップマネジメントが支援する対象が管理層(管理職・マネジメント職)に限定されていましたが、今回の改訂では、管理層だけではなく現場のリーダーや特定の業務の担当者など、その仕事(役割)を任されたすべての人がリーダーシップを発揮できるよう支援することが要求されています。

  • その他の関連する役割

役職の有無にかかわらず、役割を持っている立場として、各担当者が自分の責任範囲で主体的に動く必要があります。

トップマネジメントは,次に示す事項によって,環境マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。

i) その他の関連する役割が,その責任の領域においてリーダーシップを実証するよう支援する。

気候変動などの環境問題を含む、近年の事業環境の急激な変化に対応できる組織づくりが重要です。

復習 リーダーシップとコミットメントの違い

  • リーダーシップとは
    トップマネジメント直々に実施する必要がある
    「~する」
  • コミットメントとは
    実施の責任は他者に移譲できるが、説明責任はある
    「~を確実にする」

人々の積極的参加と組織文化とは

今回の改訂では、附属書A.5.1にて「組織で働く人々又は組織のために働く人々を参加させる文化を推進する」と追記されました。

人々の積極的参加は、「組織のすべての階層にいる、力量があり、権限を与えられ、積極的に参加する人々が、価値を創造し提供する組織の実現能力を強化するためには必須である」とISO9001で説明されています。

また、組織文化は、組織が大切にし従業員に共有されている価値観や方針、ビジョン、行動規範、信念、仕事のやり方などを指します。

環境側面(リスク)が業務とどう繋がっているのか伝える、環境方針を自分の言葉としてリーダーが説明する、改善提案制度に小さな環境活動を追加する、教育訓練を自身で考える場に変える、評価制度に組み込むなど、多様なアプローチで組織文化を形成しましょう。

【箇条5】リーダーシップ 5.2:環境方針

  • サステナビリティ
  • 環境保護の範囲の拡大

箇条5.2は、環境目標の枠組みとなる環境方針の確立・実施・維持を要求しています。
環境方針の中には、環境保護に対するコミットメント(約束事)も決めなければなりません。

今回の改訂では、2015年版でも注記で補足されていた、持続可能な資源の利用、気候変動の緩和及び気候変動への適応、生物多様性及び生態系の保護以外にも、

  • 天然資源の保存や保護

が追加されました。

トップマネジメントは,組織の環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で,次の事項を満たす環境方針を確立し,実施し,維持しなければならない。

・・・

c) 汚染の予防,及び組織の状況に関連するその他の固有なコミットメントを含む,環境保護に対するコミットメントを含む。

注記 環境保護に対するその他の固有なコミットメントには,天然資源の保存若しくは保全,持続可能な資源の利用,気候変動の緩和及び気候変動への適応,又は生物多様性及び生態系の保護を含み得る。

天然資源は、エネルギー資源・鉱物資源・生物資源・無生物資源の4種類に分けられます。

天然資源の保存と保護 事例

  • 化石燃料、核エネルギー、再生可能エネルギー
    例:石炭、石油、天然ガス、ウラン
    「節電や再エネ導入により、エネルギー使用量の抑制や温室効果ガス排出量を削減し、間接的に化石資源を保護する」
  • 金属資源、非金属鉱物
    例:鉄、銅、レアメタル、アルミニウム、石灰石、ケイ砂、粘土
    「分別・リサイクルにより、鉱物・非金属資源の新規採掘を低減し、持続可能な調達を実現する」
  • 森林資源、農業作物、水産物、その他家畜や微生物などの動植物
    例:森林
    「ペーパーレス化により、森林資源の消費を抑制し、持続可能な調達、森林認証(FSC等)、生物多様性の保護などに繋げる」
  • 水資源、大気、土壌、砂/砂利/岩石など
    例:河川水、地下水、湖沼水
    「節水や排水管理により、地域における水資源を維持する」

【箇条6】計画策定 6.1.2:環境側面

  • ライフサイクルの視点
  • 潜在的な緊急事態

ISOマネジメントシステム全体の共通構造(附属書SL/HS)が見直されたことにより、全4節だった6.1の章構成が全5節に再構成されました。

2015年版では、6.1.1「一般」で言及されていたリスク及び機会を決定することを求める要求事項が新しく追加された6.1.4「リスク及び機会」に移動し、伴って「取組の計画策定」は6.1.5へと下がり、潜在的な緊急事態を決定することを求める要求事項が6.1.2「環境側面」へ移動しました。

6.1.4「環境側面」では、ライフサイクルの視点を考慮し、組織が直接管理できる・直接管理できなくても影響を及ぼせる範囲内で、環境側面とそれに伴って発生する環境影響を決定することが要求されています。

今回の改訂では、潜在的な緊急事態を環境側面のリスク管理の一種とした要求事項の移動の他に、ライフサイクルの視点と環境側面(環境影響)の関係を注記で追加したため、意図がより明確になりました。

注記1 ライフサイクルの視点には,ライフサイクルの各段階での環境側面及び環境影響の考慮が含まれる。ライフサイクルの各段階には,原材料の取得,設計,生産,輸送又は配送(提供),使用,使用後の処理及び最終処分が含まれる。

組織は,環境影響を与える可能性のあるものを含む,潜在的な緊急事態(8.2 参照)を決定しなければならない。

環境側面は3種類に分けられます。
・日常業務などの通常の状況や、事前に計画していた変更由来のもの
・メンテナンスや異常発生時などの非通常の状況や、予期していなかった変更由来のもの
・災害発生時など緊急事態特有のもの

復習 環境側面と環境影響

  • 環境側面とは
    ≒原因
    組織の活動、製品及びサービスのうち、環境と相互に作用する要素
    例:電力使用、廃棄物排出
  • 環境影響とは
    ≒結果
    組織の環境側面から生じる、(有害か有益か問わない)環境の変化
    例:CO₂排出量の増加、資源枯渇や土壌汚染や最終処分場への負荷

潜在的な緊急事態は2種類あります。
・環境側面から抽出される、通常の運用中には発生しないような有害な環境影響をもたらす可能性のあるもの
・法規制違反や製品性能の誤表示、健康被害といった、事業上で発生する、組織に対するその他の影響をもたらす可能性のあるもの

潜在的な緊急事態 事例

  • 破損、転倒による漏洩 タンクや配管の破損による、燃料や化学物質の流出、それに伴う土壌・水質汚染
  • 倉庫火災や爆発 可燃物の不適切保管やスパークなどによる、有害ガスの大気汚染や消火水の水質汚濁
  • 排水や水環境事故 設備異常による爆発と、それに伴う粉塵や有害物の飛散
  • 廃棄物関連事故 有害廃棄物の取扱失敗や、委託業者輸送中事故や不法投棄による、健康被害や社会的信用失墜
  • 自然災害の発生 地震や豪雨(洪水)や台風による、設備損壊や浸水、保管物の飛散や流出

【箇条6】計画策定 6.1.4:リスク及び機会

  • 状況の理解及びリスクと機会

今回の改訂では、「リスクと機会」に関して、新たに独立した箇条が設けられました。
2015年版でも6.1.1「一般」で要求されていたため、新しい活動を要求されているわけではありません。
環境側面や順守義務との関係性がより明確になり、リスクと機会の洗い出しが組織にとって重要であることが強調されました。

2015年版で導入されたリスクベース思考(Risk-based thinking)がさらに詳細に求められ、サプライヤーリスクや情報漏洩リスクの管理が強く求められる可能性があります。

【箇条6】計画策定 6.3:変更の計画策定

  • マネジメントシステム変更の計画・管理

今回の改訂で、6.3「変更の計画策定」という項目が新設されます。

ここでは、マネジメントシステムの変更を計画的に行う必要があると明確化されました。
場当たり的な対応ではなく、状況に応じた適切な変更を計画的に実行し、EMSの意図した成果を達成できるよう、組織の事業プロセスを管理していくことが求められています。

組織が環境マネジメントシステムに影響を与える,又は影響を与える可能性のある変更の必要性を決定したとき,その変更は,計画的な方法で行わなければならない。その変更は,組織が環境マネジメントシステムの意図した成果を達成できることを確実にするようにマネジメントされなければならない。

注記1 環境マネジメントシステムの変更の必要性は,内部又は外部の要因から生じる可能性がある。例については,A.6.3 を参照。

注記2 変更のマネジメントは,この規格の様々な要求事項で取り扱われている。例については,A.6.3 を参照。

環境マネジメントシステムに影響を与える変更とは、例えば、新製品の導入や事業プロセスの変更、組織再編などが挙げられます。

復習 環境マネジメントシステムの意図した成果

環境マネジメントシステムの意図した成果とは

  1. 環境パフォーマンスを向上させていること(継続的に改善していること)
  2. 順守義務を満たしていること
  3. 環境目標を達成していること
この3点がすべての環境マネジメントシステムの存在理由です。

注意すべきポイント

ISO14001では、計画の策定だけでなく「変更に伴って発生する可能性のある影響を管理すること」も求められています。
また、それらの管理対象は、環境マネジメントシステムそのものの変更以外にも、「変更によって影響を受ける可能性のある環境状態」も含みます。

【箇条8】運用 8.1:運用の計画策定及び管理

  • ライフサイクルの視点
  • 外部委託したプロセスとサプライチェーン

箇条8.1は、特定した環境側面、リスクおよび機会に対して、環境方針や環境目標を達成するための運用を、計画的かつ管理された形で日々の業務の中で実施することが要求されています。

今回の改訂では、2015年版の「外部委託したプロセス」が「外部から提供されるプロセス、製品またはサービス」という表現に変更になりました。

これにより、運用管理の対象はサプライヤーや外部委託先の業務の流れだけではなく、納品された製品やサービスにまで拡大させる必要があります。
ただし、組織が日々の業務プロセスをきちんと管理していくことが求められているのはこれまでも同様ですので、目を向ける範囲が広がった程度に考えましょう。

【箇条9】パフォーマンス評価 9.1.1:一般

  • 標準をより理解しやすくする

箇条9.1では、環境マネジメントシステムが意図した成果を達成しているかを、監視・測定・分析・評価によって客観的に確認することが要求されています。

今回の改訂では、環境パフォーマンスと環境マネジメントシステムの有効性を評価することについて、より明示的な文章表現に変更になり、評価のプロセスに「分析」という言葉が加わりました。

ただし、求められる取り組み内容に変更はほとんどありません。

【箇条9】パフォーマンス評価 9.2.2:内部監査プログラム

  • 標準をより理解しやすくする

箇条9.2は、内部監査の実施を要求しています。

2015年版では、内部監査プログラムを確立するとき、環境上の重要性・組織に影響を及ぼす変更・前回までの監査の結果を「考慮に入れる」としていましたが、これが「考慮する」に変更になりました。
後者は、その事項について考える必要があるが除外することができるという意味ですので、必須となる度合いは下がったと言えます。

さらに、今回の改訂では、監査基準と監査範囲に加え、監査目的を明確にすることが追加されました。

その他、文書化要求の対象として、監査プログラムの実施の証拠や監査結果の証拠に加え、監査プログラムも追加されていますが、実務的な面での変化はほぼないでしょう。

それらの内部監査プログラムを確立するとき,組織は,関連するプロセスの環境上の重要性,組織に影響を及ぼす変更及び前回までの監査の結果を考慮しなければならない。

・・・

組織は,次に示す事項を行わなければならない。
a) 各監査について,監査目的,監査基準及び監査範囲を明確にする。

・・・

組織は,次の事項に関する文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない。
- 監査プログラム
- 監査プログラムの実施の証拠
- 監査結果の証拠

よくある勘違いとしては、内部監査プログラムを個別の監査のタイムテーブルのようなものと認識していることです。

復習 内部監査プログラム

内部監査プログラムとは

内部監査を実施するためのプロセスや取り決め、全体設計図のことであり、個別の計画(日時や監査員名、タイムテーブル)のことではない
例:方針、目的、実施頻度、対象範囲、重点配分、手法、責任者、力量の確保方法など

なぜ監査の目的は重要なのか?

目的があいまいなまま監査を実施すると、結局、この結果は良かったのか、悪かったのかということすら判断できなくなるため、「この内部監査を行うことでどういう成果を挙げたいのか」など、明らかにしたいことや最終目的をはっきりさせておくことが重要です。

不適合を探すことを目的にするのではなく、組織の現状(課題や目標)に合わせた具体的な監査目的、監査視点を持ちましょう。

【箇条9】パフォーマンス評価 9.3.2:マネジメントレビューへのインプット

  • 標準をより理解しやすくする

箇条9.3のマネジメントレビューは、今回の改訂で、9.3.1「一般」、9.3.2「マネジメントレビューへのインプット」、9.3.3「マネジメントレビューの結果」の3つのサブ項目に分割されました。

トップマネジメント(経営層)への報告について、これまで「考慮する」項目とされてきたものが、明確に「インプットする項目」へと変化しました。
実質的な変更はありませんが、より強く義務化されたと認識しましょう。

【箇条10】改善 10.1:継続的改善

  • 標準をより理解しやすくする

従来、10.1「一般」と10.3「継続的改善」に分かれていた項番が、改訂版では統合され10.1「継続的改善」になりました。

ただし、10.3「継続的改善」で求められていた取り組み内容がそのまま移動になったため、マネジメントシステムに変更はありません。
組織が継続的に環境マネジメントシステムを改善していく活動が要求されているのは、これまでも同様です。

また、今回の改訂では附属書Aの活用が重要なキーとなります。
正式な国際規格が公開されたら、必ず要求事項本文(箇条4~箇条10)とセットで確認するようにしましょう。

附属書Aの拡張

要求事項本文に対応するガイダンスとして内容が充実しました。
全般にわたって追記等が行われていますが、一部ご紹介します。

A.3 概念の明確化 新規追加

―"成果"(outcome)と言う言葉は、環境マネジメントシステムを実施したことによる,予想された,かつ,計画された結果を指す。対照的に,"結果"(result)は,特定の効果又はアウトプットを指し,測定,定性的若しくは定量的データ,計算,又はパフォーマンスの指標に関連付けられることが多い。成果は,戦略的な意図及び方向性を強調するのに対し,結果は,既に実現された達成物を指す。

A.3 概念の明確化 修正

―マネジメントシステム規格に関する ISO の要求事項に準拠するため,“外部委託する”という用語は削除され,“外部委託されたプロセス”という表現は,“外部から提供されるプロセス,製品又はサービス”に置き換えられた。外部から提供されるプロセス,製品又はサービスとは,組織が利用するが,組織外の他者によって供給されるものである。“外部提供者”という表現は,製品又はサービスを提供する請負者を含む外部供給者の組織を意味する。

A.5.1 リーダーシップ及びコミットメント 一部追加

トップマネジメントは,環境パフォーマンスの向上,順守義務を満たすこと及び環境目標の達成を含め,環境マネジメントシステムの意図した成果に寄与する活動における,組織で働く人々又は組織のために働く人々を参加させる文化を推進することによって,管理層がリーダーシップを実証するように支援する。

トップマネジメントは,環境及び持続可能性の課題に対する行動を通じて,リーダーシップを実証し,利害関係者との信頼関係を高めることができる。

A.7.3 認識 一部追加

組織は,従業員の参加,コミュニケーション,教育訓練,及び行動規範のような内部方針を含む,様々なアプローチを通じて認識を高めることができる。

A.7.4 コミュニケーション 一部追加

環境及び持続可能性に関する情報を開示するための外部コミュニケーションの要求事項は,増加し続けている。外部コミュニケーションは,組織の順守義務に基づいて,強制的なものとすることも,又は任意のものとすることもできる。強制的なコミュニケーションは,例えば環境上の運用許可に関連するパフォーマンスについて政府機関又はその他の当局に報告するなどの,法的要求事項に関連する可能性がある。外部コミュニケーションには,組織の他の利害関係者(例えば,投資家,サプライチェーン内の事業体,顧客,最終消費者)とのコミュニケーションも含み得る。組織は,その製品又はサービスに関連する環境情報(例えば,資源効率,ウォーターフットプリント)について任意に報告することを決定できる。組織は,製品のライフサイクル全体にわたる継続的改善を支援するため,供給者及び顧客と関わり環境側面に関する情報を取得し共有することで便益を得ることが可能である。

7つの「検討するべきテーマ」に対応している改訂も多い

本記事のはじめでご紹介した「ライフサイクルの視点」「外部レポーティング」「エンゲージメントと環境への責任を重んじる組織文化」「外部委託したプロセスとサプライチェーン」などの7つのテーマが反映された修正も多いため、意識して確認してみましょう。

最後に、規格全体で以下のような修正が行われているため、ご紹介します。

附属書SL/HSに合わせ、文書化要求の表現をわかりやすく変更

規格解釈の誤解を避けるため、意味を明確にする目的で「文書化した情報を維持する、保持する」の表現が変更になります。
従来の意図と変わらないため、新しい処置は必要ありません。

「文書化した情報として維持しなければならない」
 → 「文書化した情報として利用可能な状態にしなければならない」

「文書化した情報を保持しなければならない」
 → 「~の証拠として、文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない」

復習 文書化した情報とは

文書化した情報とは、「組織が管理し、維持するように要求されている文書、及びそれが含まれている媒体」のことを言います。

よって、すでに維持するという意味は含まれているという意図から、新規格では削除されたと見てよいでしょう。

復習 利用可能な状態とは

利用可能な状態とは、「社内の要員が、情報にアクセスして入手し、使用できる状態や、外部から情報の開示を求められれば、常に提供できる状態」であることを言います。

復習 従来の表現「維持する・保持する」とは

維持するとは、「マニュアルや規定、手順書のように、方針や業務の変更・改善に合わせて、最新の情報を反映させ、常に適切な状態に維持する」ことを言います。

保持するとは、「検査結果や点検表、議事録のように、業務の結果や実施の証拠を示す記録として、過去の事実を証明したり、分析・評価するためのものであり、内容を変更せずに一定期間保持する」ことを言います。

これら従来の表現と、意図は変わっていません。

!注意!

これまで解説した内容は変更になる可能性があります。
詳細については、改訂版の国際規格やJIS規格が発行された後に確認し、
自社の環境マネジメントシステムへの影響を個別に検討していきましょう。

移行のために必要な準備

改訂版発行前の今できることとしては、最新情報のチェック、環境マネジメントシステムのマニュアルの準備です。

今すぐできる準備の内容
  • ISO公式サイトからの情報を定期的に確認する
    ―国際標準化機構、ISO/TC207/SC1(事務局:BSI)、日本産業標準調査会、日本規格協会グループなど
  • 規格項番順に並び変えて整理しておく
    ―改訂版の発行後、現行のマニュアルのどこに新しい要素を追加し修正する必要があるのか、一目でわかります
  • 複数規格取得している場合は、統合マニュアル化も検討する
    ―今回の改訂でより共通点が増えるため、統合マニュアルは効率的な運用に寄与します
  • スリム化に取り組む
    ―この機会に「以前からのルールだから」という理由で残っている形骸化した規定を削除しておくと、規格改訂の対応時にノイズが減り、スムーズな移行に繋がります

移行審査までの流れ

また、国際規格が発行されてから移行審査までの簡単な流れは下記の通りです。
目安として最短で6か月程度、推奨される期間は1年~1年半程度の時間がかかります。

マニュアル・規程・手順書の改訂、内部監査員などの実務担当者の養成、新しい基準に基づいた社内での運用実績の確保、内部監査やマネジメントレビューの実施など、一連のプロジェクトを計画的に進める必要があります。

STEP
01

改訂版の規格を理解する

新しく追加された、もしくは削除や修正など内容が変更された、用語・概念・要求事項を確認しましょう。また、「なぜこのような追加・変更が行われたのか?」という意図や背景まで理解することが重要です。

STEP
02

新旧の規格の差分を洗い出し、自社の状況とのギャップ分析をする

「当社ではこの新しい要求に対する取り組みは存在していた?」「この取り組みが足りていないかもしれない」というように、現状を認識するところから始めます。

STEP
03

新たに追加・変更すべき取り組みを明確にし、その実施方法を決定する

「新しくこの取り組みを始めよう、既存のこの取り組みを変更しよう」と決定します。予算を考慮しながら「誰が、どうやって、いつまでに?」と実施方法を検討します。

STEP
04

ルールや決まりごとを含めた文書類の見直しを行い、更新する

マニュアルや規程、手順書などの関連する文書類を見直しましょう。

STEP
05

関係各所へ周知し、教育訓練など運用のための準備を行う

関係各所へ変更の内容を周知し、伝達しましょう。内部監査員などの実務担当者に対する教育訓練の実施、達成目標の見直し、細かい帳票類の見直しなどを行い、現場レベルでアップデートします。

STEP
06

新しい環境マネジメントシステムを運用する

改訂版の規格を新しい基準とした新システムが完成したら、実際に業務の中で運用してみましょう。運用の結果どうだったかを分析し、評価するためにも、記録やデータを蓄積しなければなりません。最低3か月以上の実績が必要です。

STEP
07

内部監査とマネジメントレビューを実施する

有効性・適合性の観点から、新システムの運用状況を内部監査でチェックし、マネジメントレビューを行いましょう。これらは移行審査の1~2か月前までに終わらせておきましょう。

新たな手続きを増やすのではなく、現在の環境マネジメントシステムが、気候変動への対応や製品サービスのライフサイクルの視点を適切に取り込めているかを見直しましょう。

Point❶

内部監査で確認したいポイント

  • 環境側面・環境影響評価における評価基準や判断プロセス(根拠)

  • リスクと機会への対応の流れ(抽出、対応策の計画~効果測定まで)

  • 法規制等の順守状況、また順守評価の結果が改善につながっているか

Point❷

マネジメントレビューで重視したいポイント

  • 目標達成状況と未達要因を明確化し、分析する

  • 内外の環境課題の変化を次年度環境方針へ反映する

  • 客観的・定量的データに基づいて資料を活用する

ISO14001:2026の移行期間は?

2022年に規格改訂のあったISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム、ISMS)の移行期間は、改訂版の国際規格が発行された2022年10月25日~2025年10月31日の3年間でした。
また、IAFによってISO14001:2026への移行期間を3年間にする方向で投票が行われる予定です。

よって、ISO14001:2026への移行も、改訂版の発行日から3年以内に審査を受け、認証登録まで完了する必要がある可能性が高いです。
その場合、2026年4月に無事発行されれば、2029年4月いっぱいで移行期限満了となります。

例えば、毎年11月に審査を受けている会社で審査予定月をずらすことを考えていなければ、2026年11月、2027年11月、2028年11月の3回新しい規格に則った審査を受けるチャンスがあります。

規格改訂モデルスケジュール

下の図は、現在の予定通り2026年4月に改訂版が発行された場合のある組織のモデルスケジュールです。

  1. 毎年11月頃に審査を受けており、2026年2月に認証登録が有効期限を迎える
  2. 社内の動きは、1年半程度既存のマネジメントシステムを更新し運用する
  3. 移行期限にあたる2029年4月よりも前に移行審査を受審し、認証登録まで終える

万が一、2026年度の審査で改訂版の基準への適合が認められず、移行審査を通過できなかったとしても、従来の2015年版で一旦認証を継続して次年度に再度チャレンジすることもできます!
始めから最終年度にあたる2028年度を移行審査年として選ぶのは避けることをおすすめします。

Point❶

移行審査は、定期(サーベイランス)審査と再認証(更新)審査、どちらの審査とも一緒の日程で受けることができます!

移行審査日が、登録証の有効期限・移行期限の直前になる場合は、認証登録手続きの進捗状況によっては、期限までに移行が間に合わない可能性があります。
余裕をもって移行期限の1年前~3か月前までには移行審査を受けるようにしましょう。

※認証登録の手続き…
審査後、審査員が審査報告書を書き上げ、認証機関内で審査報告書がレビューされた後に、認証継続の可否について判定会議が行われます。
ここで承認されれば、新しい登録証が発行されます。

Point❷

ISO認証の新規取得、初回審査を予定している場合は、2026年版が発行されるまで待つべき?

改訂後しばらくの間は、ISO14001:2015の基準に則った初回審査(初回認証登録)の申し込みを受け付けている認証機関も多いため、ISO14001:2015の基準で審査を受けることもできます。
ISO教育や文書作成など、社内で取得プロジェクトがすでに始まっている場合はそのまま進めてしまっても良いでしょう。

よくある質問

Q.

改訂版の規格が確定し、発行されるのはいつですか?

A.

2026年4月と発表されています。

Q.

移行期間はどうなりますか?

A.

現在のところは3年間と見込まれています。
予定通り、2026年4月中に改訂版が発行された場合、2029年4月末までが移行期限となります。

Q.

移行期間は、JIS(日本産業規格)が発行されてから3年間ですか?

A.

いいえ、IS(国際規格、ISO規格)が発行されてから3年間の見込みです。

Q.

認証機関が、移行審査の受付を開始するのは、改訂版の規格が発行されてすぐですか?

A.

いいえ、多くの場合、改訂版の規格が発表されてから少し後になります。
2022年10月にISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム、ISMS)の改訂があった際は、アームスタンダードの場合、発行月から11か月後にあたる2023年9月から申し込みの受付を開始しました。

認証機関からの発表をお待ちください。

Q.

認証機関が、移行審査を終了するのは、移行期限日ですか?

A.

いいえ、多くの場合、移行期限日の数か月前に、移行審査の実施を終了します。
2022年10月にISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム、ISMS)の改訂があった際は、アームスタンダードの場合、移行期限日の3か月前にあたる2023年7月末までに移行審査を完了するようにご案内していました。

認証機関からの発表をお待ちください。

Q.

認証機関が、現行の規格での初回審査や再認証審査の受付を終了するのは、改訂版の規格が発行されてすぐですか?

A.

いいえ、多くの場合、改訂後しばらくは、現行の規格の基準に則った審査の申込を受け付けています。
2022年10月にISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム、ISMS)の改訂があった際は、アームスタンダードの場合、発行月から18か月以内であれば申込を受け付けていました。

認証機関からの発表をお待ちください。

Q.

来年度に現行の規格での新規取得を検討中です。改訂版の規格が発行されるとのことですが、このまま進めて問題ありませんか?

A.

問題ありません。現行の規格は移行期間中は有効ですので、取得した後に改訂版へ移行できます。
むしろ、現行の規格で環境マネジメントシステムをしっかり固めておくと、差分だけ修正すればよいため移行はスムーズです。

Q.

移行審査を単独で受けることは可能ですか?

A.

可能ですが、できる限り通常の審査サイクルにて行われております、定期審査や再認証審査と合わせての受審を推奨します。

  • 同時審査よりも審査のコストが増える傾向にあるため
  • 認証機関との日程調整にかかる工数が増えるため

Q.

改訂版の規格の発行直前に例年審査があるのですが、その審査は何か変わりますか?

A.

改訂版の規格発効前の審査は現行の規格に基づいて実施されますので、例年通りの対応で問題ありません。
改訂版の規格が発行された後の審査で移行に向けた準備状況を確認される場合がありますので、認証機関に事前に確認しておくことをおすすめします。

Q.

改訂版の規格への移行の際に、現在の適用範囲を見直す必要があるのでしょうか?

A.

適用範囲の決定(4.3項)の要求事項の意図は従来と変わっていません。
ただ、適用範囲の決定の際には気候変動考慮に関する改訂のあった4.1項と4.2項を考慮するため、内外の課題や順守義務などを見直した際は、適用範囲も修正する必要があるか再確認することをおすすめします。

Q.

移行審査には費用がかかりますか?いつからわかりますか?

A.

はい、通常の審査と同様に費用が発生します。
既存契約に基づく追加工数(追加費用)が発生する場合が多いです。
費用は改訂版の規格が発行された後に、認証機関により公式サイト(ニュースレター)や見積依頼にて案内されます。
認証機関の料金体系、組織の規模・複雑さ・リスク・認証スコープ、移行審査のタイミングなどによっても異なるため、事前に見積を依頼し確認しましょう。

Q.

改訂対応を自社だけで進めるのが難しい場合、どうすればいいですか?

A.

認証機関の移行ガイドやセミナーを活用し、必要があればISOコンサルタントや業界団体の支援を受けると効率的です。

当社の場合、WebMiCSというツールも提供しています。

Q.

改訂版の規格への移行には、どのくらいの準備期間が必要ですか?その中で、どのくらいの運用期間が必要ですか?

A.

一般的に、最短で6か月~最大で1年半の準備期間が必要と言われています。
また、運用期間は最低3か月は必要です。

こちらのよくある質問は随時更新していきます。

認証をまだ取得していない方向け、もしくは、より初歩的な疑問をまとめたFAQは、以下の記事をご覧ください。

期間限定で、ISO14001規格改定に関する無料セミナーも開催しています。

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1997年設立。2017年ISO/IEC27001認証サービス開始。2020年ISO9001認証サービス開始。グループ合計で5,500件以上の審査実績を持つ審査機関としての、長年の経験とノウハウを活かし、ISOをより活かすことができるお役立ち情報(動画・記事・ホワイトペーパー等)を配信中。

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