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「ISOの認証機関は変えられる」ってご存じでしたか?―認証機関を移転する適切なタイミングや方法、メリットを解説

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ISO認証を取得後、「一度選んだ認証機関(※審査機関のこと)は、そのまま継続して利用するもの」だと考える方も多いですが、認証機関は「移転(変更)」することが可能です!
近年は、これを1つの選択肢として、相見積を取って費用を比較したり、審査以外のサポートや特典がないか調査したりなど、定期的に情報収集を行う企業様が業種・規模問わず増えています。
本記事では、認証機関の移転に関するポイントや適切なタイミングをご説明します。
目次[非表示]
- 1.なぜ認証機関を変更することを「移転」というの?
- 2.認証機関を移転する理由
- 2.1.移転を検討したきっかけは?
- 2.2.移転のメリット
- 3.認証機関を移転する方法
- 3.1.移転の流れや申し込みの手順(アームスタンダード株式会社の場合)
- 3.2.注意するポイント1 新しい認証機関を選ぶとき
- 3.3.注意するポイント2 前認証機関の解約手続きをするとき
- 3.4.必要な手続きや書類(アームスタンダード株式会社の場合)
- 4.認証機関移転の適切なタイミング
- 5.よくあるご質問
- 5.1.認証機関を変更すると、認証の有効期限は変わりますか?
- 5.2.認証機関を変更すると、初回審査からやり直すことになってしまいますか?
- 5.3.現在と同じ時期に審査を受けることはできますか?逆に、審査時期の変更も可能ですか?
- 5.4.認定機関のブランドや、認証機関のマークに、価値の違いはあるのでしょうか?
- 5.5.移転調査を行うとのことですが、どんなことを行いますか?そこに何か特別な料金はかかりますか?
- 5.6.審査費用をとにかく最安値に抑えたいのですが、なにか弊害はあるのでしょうか?
- 5.7.移転ができない場合はありますか?
- 5.8.印刷物に使用している元の認証機関のロゴマークは、いつまでに変更すればいいですか?
- 6.ISOをより有効活用できる認証機関を選びましょう!
なぜ認証機関を変更することを「移転」というの?
ISOに認証されている事実は、特定の認証機関(Certification Body)によって発行された証明書である「登録証」に基づいて保証されています。
そのため、認証機関を変更するのは、単なる「契約の変更」ではなく、自社の認証を管理してもらう責任を、今とは別の機関に“移す”という意味合いになります。
この変更の一連の流れは、ISOの用語では “transfer of certification”(認証の移転)と呼ばれ、以下のような特徴があります。
- 現在の認証の有効性を保ったまま、別の認証機関に移すことができます
- 通常は、移転先の認証機関が移転調査(transfer audit)を行います
- IAF(国際認定フォーラム)のガイドラインである「IAF MD 2(Mandatory Document 2)」「ISO/IEC17021」に従って行われます
この「移転」という表現は、上記でご紹介した文書にも明記されています。
つまり、国際的に標準化された、正式な用語なのです。
認証機関を移転する理由
なぜ今、認証機関の“移転”という選択肢が見直されているのでしょうか。
移転を検討された理由としてよく聞かれるものを、いくつかご紹介します。
移転を検討したきっかけは?
まずは、自社の状況の変化から移転を決められたケースです。

審査費用が高かったから
- ここ数年の業績が芳しくないため、審査のコストパフォーマンスを少しでも改善したかった。

審査対応の一本化
- 規格の種類ごとに違う認証機関だったせいで、やりとり/担当者/審査日程などが、すべて別々だったのをまとめたかった。
- 本社と違う認証機関だったが、グループ会社すべて同じ認証機関で審査を受けることになった。
次に、現行の認証機関の審査やサポート内容に不満があり、より良い対応を求めていたケースです。

経営に役立つ指摘をもらえず、納品される審査報告書の質も悪い
- 個々の規定や記録の抜け漏れの指摘ばかりなので、会社全体・運用全体として成果が出ているのかわからない。
- 今年度の審査では指摘が0件と、まったく出てこなかった。

認証機関との今後のコミュニケーションに不安があった
- 問い合わせをしてもなかなか返信がこないなど、レスポンスが遅かった。
- 昨年度に認証機関へ次回審査への申し送りをお願いしたが、今年度まったく共有されていなかった。

審査員の体制や専門性が担保されていないように感じた
- 在籍している審査員の人数が少ないのか、審査員変更などの要望に応えてもらえなかった。
- 業界について知識や理解のある審査員が派遣されてこない。
次に、自社の考えや目標にマッチしているかを重視し、比較検討を始めていたケースです。

マネジメントシステムが有効かどうか、別の視点で見直したくなったから
- 要求事項を守れていないところ以外に、良いところ/改善や工夫できそうなところなど、多様な意見をくれる認証機関を探していた。
- 事務所審査の時間よりも、部門(プロセス)審査の時間を多くとる審査方針を掲げているのが良いと思った。
また、このような事情から変更を決めた組織様もいらっしゃいます。

認証マークのデザインを変えたい
- 今の認証機関のロゴマークよりも、もう少しシステム会社らしいデザインを探していた。
移転のメリット
メリットとして特に大きいのは「費用対効果の改善」と「マンネリ化からの脱却」の2点です。
ISO認証を維持するには、毎年一定の費用が発生します。
一方で、「その費用に見合った価値が得られているか」と自問したとき、明確に答えられない企業も少なくありません。
認証コストが固定費化している今だからこそ、「今年の審査は本当に価値ある投資だったか?」を問い直すチャンスかもしれません。
また、ISO認証を取得して数年が経過すると、マネジメントシステムの運用が現状維持に傾きがちになります。
内部監査やマネジメントレビュー、是正処置といった組織活動がどんどん形骸化し、「毎年やることが決まっていて、自分たちで能動的に、現在のやり方を見直す機会もない」と感じている企業も少なくありません。
その背景には、同じ審査スタイルへの対応が長年続くことによる慣れがあり、いずれ「このままでよいのか?」という問いそのものが意識にあがらなくなってしまいます。
こうした時、認証機関を移転することで、強制的に異なる視点を取り入れられるので、大きな気づきにつながります。
認証機関によって審査方針や思想、審査員への教育カリキュラムが違うため、新しい審査員によるフィードバックやインタビューは、従来の枠組みに刺激を与え、マネジメントの仕組みや審査対応を見直すきっかけとなります。
「このKPI(目標)は本当に有効か?達成不可能な設定のまま放置していないか?」
「改善のための振り返りが、単なる報告で終わっていないか?」
こうした問いが現場に届けば、ISOは【維持するための制度】ではなく、会社の成長に活用できるマネジメントツールとして、改めて定義し直されるはずです。
認証機関を移転する方法
移転の流れと、担当者の方がどのような準備をする必要があるのか、当社の例を参考に確認してみましょう。
(どの認証機関でも、提出書類や契約のタイミング、訪問調査を行うのかなどの細かい違いがあっても、大まかな流れは変わりません。)
移転の流れや申し込みの手順(アームスタンダード株式会社の場合)
STEP
0
認証機関の選定
気になる認証機関の見積もりを請求し、現在の認証機関に支払っている金額や支払い条件と比較してみましょう。
また、現行の認証機関で満足できていない点を洗い出し、それは新しい認証機関で解消できるのか、サポート内容なども考慮に入れて問い合わせてみましょう。
STEP
1
申込書(移転の申請)や必要書類の提出
認証機関が用意している申込書をご提出ください。
その際、認証機関が求める既存文書(下記「必要な手続きや書類」参照)も一緒に用意しておきましょう。
STEP
2
契約の締結
STEP1でご提出いただいた書類に不備が無いか、受け入れが可能か、認証機関によって確認されます。
書面や電話などで追加確認が行われる場合がありますが、問題がなければそのままご契約となります。
STEP
3
新しい認証機関が移転調査を実施
登録証の登録範囲における組織の運用状況について、有効であることを確認します。
審査ではないため指摘は出ず、基本的には文書のレビューだけで完了しますが、直近の審査で是正処置が未完了の不適合がある場合は、訪問することもあります。
STEP
4
新しい認証機関が認証(移転登録)の可否を判定
移転調査の結果を踏まえ、「認証判定会議」にて、認証の可否を決定します。
認証の決定が下りましたら、決定の通知や認証ロゴマークのデータがお手元に届きます。
STEP
5
新しい認証機関が新しい登録証を発行
新しい認証機関の登録証が発行されます。
登録証のデザインを事前に確認してみたい場合は、STEP0の段階で認証機関に問い合わせてみましょう。
STEP
6
審査の実施
移転完了後は、以前の認証機関と同様のサイクル・審査時期に基づいて、定期審査または再認証審査が実施されます。
従来のスケジュール通りマネジメントシステムを運用し、組織経営の改善活動を促進しましょう。
注意するポイント1 新しい認証機関を選ぶとき
認証マークの信頼性に関わるため、新しい認証機関を選ぶとき(STEP1)、以下の点を必ずチェックしましょう。
- 候補の認証機関が、 IAF(国際認定フォーラム)加盟の認定機関から認定されているか
- 候補の認証機関が、現在と同じ規格に対応しているか
<各国認定機関の例>
国名 | 認証機関名 |
|---|---|
アメリカ | ANAB |
日本 | JAB |
イギリス | UKAS |
イタリア | ACCREDIA |
オランダ | RvA |
オーストラリア | JAS/ANZ |
注意するポイント2 前認証機関の解約手続きをするとき
現行の認証機関へ登録解除の手続きを申請するのは、新しい登録証がお手元に届いた後(STEP5)が一般的です。
また、現行の機関に取り消し手続きをする際の「取り消し日」につきましては、ご契約時の取り消し条件により異なりますが、新しい認証機関の登録証に記載されている「移転日」にするのが適切です。
必要な手続きや書類(アームスタンダード株式会社の場合)
「認証機関を変更するのって、書類をたくさん書いたり手続きが沢山あって、大変ではないのか?」という質問をお客様から受けることもあります。
当社の場合、手続きの際に新たにご用意・ご記入いただくのは、★がついた3つの文書だけです。
その他は、現行の認証機関から受け取った審査書類や、社内で運用しているマニュアル類など、既存文書の写しをそのままご提出いただくことでお申し込みが完了します。
必要書類 | 様式 |
|---|---|
★ コース選択申込書 ※1 | 当社(新しい認証機関)の様式 |
★ マネジメントシステム審査申込書 ※2 | 当社(新しい認証機関)の様式 |
★ [ISMSのみ]組織の事業及びIT環境確認書 ※3 | 当社(新しい認証機関)の様式 |
現在の認証機関発行の登録証および付属書のコピー(有効期限内のもの) | 現行の認証機関の様式 |
最後に実施された初回認証/再認証審査の審査報告書、およびそれ以降の定期審査報告書のコピー | 現行の認証機関の様式 |
直近の指摘内容がわかる資料のコピー | 現行の認証機関の様式 |
指摘の中に不適合があれば、是正処置の記録および是正処置完了の記録のコピー | 現行の認証機関の様式 |
会社案内・パンフレット・製品サービスのカタログ | 貴社の自由形式 |
マネジメントシステムマニュアルのコピー(最新版のもの) | 貴社の自由形式 |
組織図(最新版のもの) | 貴社の自由形式 |
前回審査より後に発生した、マネジメントシステムに関する苦情やクレームがあれば、処置に関する記録のコピー | 貴社の自由形式 |
[ISMSのみ]適用宣言書のコピー | 貴社の自由形式 |
※1 会社の基本情報や請求情報、どのサービスを申し込むのかを記載いただく簡易申込書になります。
※2 取得する規格の種類や登録範囲など、現在のマネジメントシステム情報を記載いただく申込書にあたります。
※3 社内のITインフラの複雑さ、社内の開発業務の存在、外部委託の程度など、ISMS審査を実行するにあたって必要な情報にご回答いただく確認文書です。
認証機関移転の適切なタイミング
移転の申し込みに最も適している時期は、審査が完了した後になるかと思います。
認証機関によりますが、当社の場合、お申し込みから移転が完了するまでに2か月~3か月程度、移転完了後の次回審査前には、審査員の手配などの準備に2か月程度の時間を要します。
次回審査まで半年程度の時間的余裕があれば、ほとんどの企業でスムーズな切り替えが可能です。
現行の認証機関では物足りない部分がはっきりとしたこの時期に、情報収集を始めましょう。
逆に、推奨できないタイミングとは?
適しているタイミングがある一方で、移転の申し込みを避けた方がいい時期も存在します。
特に、現在の「再認証(更新)審査」時期の直前は避けましょう。
例えば、次回審査が「定期(サーベイランス)審査」だった場合は、審査時期の後ろ倒しも可能なため、大きな問題にはなりません。
しかしながら、「再認証(更新)審査」だった場合は、登録証の有効期限日までに審査を行って登録更新を完了させなければならないため、従来の審査時期と有効期限が近い場合、審査の後ろ倒しは原則として不可能です。
認証機関側の審査員の手配などの準備が間に合わないと、最悪の場合、認証の失効・初回審査からやり直しという事態になってしまいます。
認証の有効期間が確保されている状態であれば、移転先での計画的な対応が可能です。
よくあるご質問
Q.
認証機関を変更すると、認証の有効期限は変わりますか?
A.
いいえ、認証の有効期限は原則として変わりません。
現在の認証期間を引き継ぎ、移転先の認証機関でも継続して審査が行われます。
Q.
認証機関を変更すると、初回審査からやり直すことになってしまいますか?
A.
認証の有効期限は基本的に変わりません。
現在の認証期間を引き継ぎ、移転先の認証機関でも継続して審査が行われます。
Q.
現在と同じ時期に審査を受けることはできますか?逆に、審査時期の変更も可能ですか?
A.
どちらも可能です。
ただし、「再認証(更新)審査」は登録証記載の有効期限までに行う必要があるため、大幅な変更が難しい場合があります。
あらかじめご相談ください。
Q.
認定機関のブランドや、認証機関のマークに、価値の違いはあるのでしょうか?
A.
ありません。
ISO認証は、IAF(国際認定フォーラム)から各国の認定機関へ、各国の認定機関から認証機関へという委託形式です。
認定機関や認証機関として認められる基準やルールも全世界共通のため、どの認証機関でもブランドに差が出ることはありません。
Q.
移転調査を行うとのことですが、どんなことを行いますか?そこに何か特別な料金はかかりますか?
A.
当社の場合は、基本的にはご提出いただいた文書のレビューのみで完了します。
認証機関によって訪問調査を必ず行うなど手順に違いがありますので、各機関にご確認ください。
また、一般的に、移転手続きに伴う料金は発生しません。
Q.
審査費用をとにかく最安値に抑えたいのですが、なにか弊害はあるのでしょうか?
A.
認証機関は、認定料金などの一部金額はあらかじめ定められていますが、他にもサービスの維持のために「審査員の採用育成費」「認定機関へ支払う認定審査費用や認定料金」「審査準備や判定を行うための事務経費」などの費用がかかっています。
審査費用を削るとなると、サービス維持のための経費を削ることになり、組織対応のプロセス品質の低下につながる可能性もあります。
認証マークだけではなく、審査員やサポートの質も重視される場合は、複数の条件で総合的に比較するのが良いでしょう。
Q.
移転ができない場合はありますか?
A.
多くのケースで移転は可能ですが、以下のような場合には「移転」としては扱えず、初回審査やそれに準じた対応となる可能性があります。
- 現在、 IAF(国際認定フォーラム)加盟の認定機関から、認定を受けていない認証機関から認証を受けている場合
- 現在、 IAF(国際認定フォーラム)加盟の認定機関から、認定の失効/一時停止/取り消しなどの処分措置を受けた認証機関から認証を受けている場合
- 現在、審査登録業務を中止/終了してしまった認証機関から認証を受けている場合
このようなケースでは通常とは異なる対応が必要となるため、事前のご相談をおすすめします。
Q.
印刷物に使用している元の認証機関のロゴマークは、いつまでに変更すればいいですか?
A.
ホームページ、会社パンフレットや名刺などの印刷物、看板などに使用しているロゴマークは、移転が完了したら速やかに変更する必要があります。
できる限り次回審査日までには変更を終えてください。
ただし、印刷物の場合は在庫があったり、看板の場合は工事の手配があったりなど、事情があるかと思います。
次回分からは新しいデータで発注する、業者へ見積を依頼しておくなど、柔軟に対応していただき、事前に認証機関まで連絡しておきましょう。
ISOをより有効活用できる認証機関を選びましょう!
- ISOの認証登録を維持していくうえで、認証機関の変更は決して特別なことではありません。
- むしろ近年では、マネジメントシステムの見直しや審査の費用対効果の改善を目的に、「移転」を選ぶ企業が増えています。
- 移転の手続き自体も煩雑ではなく、タイミングを見極めて動くことで、スムーズな移行が可能です。
- 移転は、ISOを“維持するための仕組み”から“経営に活かすツール”へと再定義する第一歩となります。
現在の審査や社内での運用に小さな疑問を感じているのであれば、それこそが改善に向けた第一歩かもしれません。





